おススメ記事
下請職人を使うのはアリ?ナシ?(前)

下請職人を偽装 「塗装は自社職人」が真実とは限らない

「自社職人で工事をしています。」といった広告をみることがありますが、それは絶対の安心を保証する言葉なのでしょうか?また、自社職人という言葉を信じてよいものなのでしょうか?(ここで言う自社職人とは、通常自社施工すべき塗装等の職人で、足場や熟練が必要な特定種の防水工事などの職人は除きます。)
今回は、業界の闇ともいえる、職人の所属問題について書きたいと思います。

自社職人と下請職人の定義

自社職人とするには、以下の要件にあてはまる必要があります。

  1. 雇用契約がある
  2. 会社で社会保険に加入している
  3. 有給がある
  4. 雇用保険に入っている
  5. 会社で日常的に指導をしている
  6. 請負契約ではない

会社組織になっていない5人以下の個人事業主の元に勤める場合は社会保険に加入する義務はないですが、基本的にこの❶~❻の全てに当てはまらなければ、社員とは言えません。当然自社職人とも言えないので自社職人のように見えても下請です。

特に❺や❻に当てはまらず、1棟いくらで工事を行っているような場合は、自社職人と称していても間違いなく下請職人です。

社会保険がない?!下請職人たちを取り巻く厳しい環境

建設業界の社会保険加入率は未だに3割ほどで、そのほとんどが建設会社の社員やリフォーム会社などのその他会社では職人以外の営業や事務の社員であるため、実際に現場で働く職人たちで加入していないといった厳しい現実があります。
「社員なのに加入してもらえないの?」と疑問に思う方も多いかと思いますが、建設会社の社員の場合は総じて社会保険には加入しています。問題なのは下請会社の所属として働く職人たちです。

社員でない職人たち

社会的な問題ともなっていますが、建設業界の下請け業者は未だに多くが社会保険に未加入です。法人としての登記がなく5人未満の会社ならば社会保険に加入しなくても良いので、それに該当するケースもありますが、例え資本金が1円であっても法人登記がしてある場合は例外なく社会保険に加入しないといけません。しかし、残念ながらこのルールを守らない法人が少なくありません。
理由はいろいろあります。社会保険に加入するには、原則として加入者と企業で1/2ずつ保険料を負担しないといけません。労働者からは自己負担分を徴収しないといけないのですが、これに激しく抵抗する職人は少なくありません。それに会社側も負担をすることをベースでの経理が出来ていないといった問題の他、給与が毎月決まっているわけではなく保険料の計算が難しいと考える経営者が多いといった事情もあります。
自社職人と称されながら未加入の場合は、実際は社員ではなく外注扱いです。リフォーム会社や塗り替え会社の場合、この状態で不公平な条件で下請けとして働いている人が実に多いです。

手抜き工事を生む不公平な下請け契約

下請けとして働く職人は、1日いくらではなく、1件いくらでの請負契約を結びます。多くが他にも仕事の当てがなく、計算も苦手なので、勤める場合よりも低い金額で請負っています。それらの金額を調べたところ、手抜きなく真面目に工事をすれば、社会保険料を加算すると当社社員でいるほうが手取りは多いです(当社計算)。なお、この金額は消費者の支払う金額には関係なく、例え高額な工事代金で消費者が発注していても元請が大半を取ってしまい、作業をする職人には還元されていません。
これは歩掛(人が施工できる平均の値)で計算していますので、ほとんど誤差なく算出できています。悪い会社は「ウチの職人は普通よりも一生懸命工事するので同じ時間で他よりも多く施工できます。」とウソぶくかもしれませんが、人が1日に出来る量には限界があり、”手抜きでもしないと”多く施工することは出来ません。外注扱いであるため車両や道具などは自己負担であるので勤めているよりも負担が多いにも関わらず、勤めているレベルの金額しか得られないのであれば、どうにかして勤めていた時よりも多く稼ごうとします。はじめの一回や二回は頑張れたとしても無理には限界があるので、元請け会社に分からないように手を抜く方法を職人間で共有するなどして、あっという間に手抜きを覚えます。要するに、手抜なしでは独立して稼げた感がない金額なので、必然的に手抜きが発生しやすい構造にあるのです。当たり前ですが、外注として扱われ、不公平な条件で働く職人たちには当然社会保険には加入してもらえません。当然ですが自らも加入することもありません。

 

次回に続きます。。。。

 

おすすめの記事
技術と信用なら!岡部塗装店
技術と信用なら!岡部塗装店
150年は伊達じゃない!長い歴史と実績で積み重ねてきた技術と信用 塗装業を150年近くやっておりますと、様々な技術だけでなく多くのノウハウが溜まっています。塗装に関して建築会社や設計事務所といったプロからの技術的な問合せや協力依頼が弊社には多くあります。 その様な事例をいくつかご紹介します。 ①一般の塗装会社が出来ない...
住宅塗装 夏に気を付ける事
住宅塗装 夏に気を付ける事
夏の塗装の注意点!気を付けることがいっぱい 今年(令和3年)の関東甲信越地方は7月16日に梅雨明けをしました。 気温も一気に上がり、まさに夏本番を迎えましたが、真夏だからこそ気を付けるべきことがあるので、ご紹介します。 1.夕立とゲリラ豪雨に注意 夕立もゲリラ豪雨も、何の前触れもなく突然降りだします。昔と違って、気象庁...
足場キャンペーンは本当に得か?
足場キャンペーンは本当に得か?
足場が「無料」や「半額」のキャンペーンには裏がある! キャンペーンと称して「足場無料」とか「足場半額」で広告を出している会社がありますが、それらは本当に得なのでしょうか?今回はそのようなキャンペーンを検証したいと思います。 市内 某リフォーム会社 「足場半額キャンペーン」の折り込みチラシが入ってきました。 その内容をよ...
7月16日は、七色の「虹」の日 ~塗装の世界にも色のセンスは必要です!~
7月16日は、七色の「虹」の日 ~塗装の世界にも色のセンスは必要です!~
今日7月16日は虹の日です。7(なな)16(いろ)をもじって虹の日にしたということなので、今日は虹の色について書きたいと思います。 虹は7色ではない!? 「虹は七色」日本では7色と当たり前のように思われていますが、虹の色の数は国や地域によって違っています。もちろん、虹の色はプリズム現象で生じるもので巣から、どこでも同様...
スレート瓦が割れる!「2004年問題」
スレート瓦が割れる!「2004年問題」
スレート瓦の2004年問題 初期のノンアスベスト瓦が割れて崩れる! 最近は金属屋根の家が増えてきましたが、まだまだ薄型スレート瓦が多くの家で使われています。価格が安く、軽く工事も比較的簡単なので建築コストを抑えるために「コロニアル」や「カラーベスト」の別称(いずれも商品名)で1980年頃から多く使われるようになりました...
下請職人を使うのはアリ?ナシ?(前)
下請職人を使うのはアリ?ナシ?(前)
下請職人を偽装 「塗装は自社職人」が真実とは限らない 「自社職人で工事をしています。」といった広告をみることがありますが、それは絶対の安心を保証する言葉なのでしょうか?また、自社職人という言葉を信じてよいものなのでしょうか?(ここで言う自社職人とは、通常自社施工すべき塗装等の職人で、足場や熟練が必要な特定種の防水工事な...
「塗り替え」で当り業者が少ない理由②
「塗り替え」で当り業者が少ない理由②
塗り替えの当たり業者を見分けるためには消費者自身の知識も必要 良い塗り替え業者に出会うのは「宝くじに当たるのと同じくらい難しい」、「九十九里浜で一粒の赤い砂を見つけ出すのと同じ」などと言われるくらい、真の意味で信頼できる業者は少ないのが塗装業界です。 今回は、「『塗り替え』でハズレ業者が多い理由」の続きをお話しします。...
ローラーだけで塗装する弊害
ローラーだけで塗装する弊害
ローラーだけで塗装するのは手抜きと言える! 弊社の建築現場のお隣で、塗り替え工事が行われており、施工の様子を見ることと工事を行っていた職人さんたちと話す機会があったので、今の塗り替え業界で起きている問題点と施工している人たちの厳しい現状をお話しします。 ローラーだけで工事を行う職人(?) 本来は、端部や入隅、細幅の部分...
塗り回数は何回が適切か?
塗り回数は何回が適切か?
回数塗れば良いわけでない!塗り回数は、多すぎても不適切 多くの方から頂く質問をブログ形式で紹介する第2回目は、「(塗装は)何回塗りをしますか?」という質問に回答します。 標準は2回塗り、でも工程や塗料によって異なります! 表面に塗られる仕上げとされる塗装は原則として2回塗りです。1回目も2回目も全体を塗るのですが、2回...