外壁塗装の見積書に出てくる「アクリル」「ウレタン」「シリコン」「フッ素」「無機」。さらに「ラジカル制御型」「高意匠」という言葉もあり、名前だけでは違いが分かりにくいものです。このページでは、建築の塗り替えに使う塗料を、樹脂・組成、劣化を抑える技術、仕上がりの三つの視点から解説します。
大切なのは、塗料名だけで工事の良し悪しを決めないことです。塗る場所、既存の塗膜、下地の傷み、下塗りとの組合せ、施工方法まで含めて選びましょう。
最初に知っておきたい、塗料の分類の違い
| 分類の視点 | 主な呼び方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 塗膜をつくる材料・樹脂 | アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素・無機系 | 製品の樹脂系統・組成と用途 |
| 劣化を抑える技術 | ラジカル制御型 | どの樹脂・製品に、どの技術を組み合わせているか |
| 模様・質感などの仕上がり | 高意匠塗料・意匠性仕上塗材 | 見本、施工方法、塗り替え時の対応 |
例えば「ラジカル制御型のシリコン系塗料」「シリコン樹脂を使った多彩模様塗料」のように、分類は重なることがあります。ラジカル制御型や高意匠塗料を、樹脂名と同じ一本の順位表に並べると誤解が生じます。
アクリル樹脂塗料
アクリル樹脂を用いて塗膜をつくる塗料です。アクリル系の材料には上塗りだけでなく、下塗り材や模様をつくる仕上塗材もあります。「アクリル」と書かれていても、用途や塗膜の性質まで同じではありません。
外壁の上塗りを選ぶ場合は、必要な耐候性と次回の改修計画を確認します。一方、弾性のある仕上塗材や下塗り材を、一般的な上塗り塗料の比較だけで評価するのも適切ではありません。見積書では、樹脂名に加えて製品名と工程内の役割を確かめてください。
参考:日本ペイントの建築用塗料カタログ一覧には、アクリル系の複層仕上げや下塗り材などが掲載されています。
ウレタン樹脂塗料
ウレタン樹脂系の塗料には、水性・溶剤系、1液形・2液形などの製品があります。外壁のほか、適用する下塗りとの組合せにより鉄部や木部などにも使える製品があり、塗り替えの対象が幅広いことが特徴です。
例えば日本ペイント「ファインウレタンU100」は2液形ポリウレタン樹脂塗料で、はけ塗りやローラー作業性、既存塗膜への塗り替え適性などが特長として示されています。ただし、これをウレタン塗料すべての性能として読み替えることはできません。
付帯部を含めて塗装する場合も、外壁と同じ塗料を一律に使うのではなく、素材と既存塗膜に適した仕様かを確認します。参考:日本ペイント「ファインウレタンU100」。
シリコン樹脂塗料
建築用でシリコン系と呼ばれる製品には、アクリルシリコン樹脂塗料などがあります。シロキサン結合を活用して耐候性を高めた製品があり、外壁や付帯部の塗り替えで検討される系統です。目地に使うシリコーンシーリング材とは、用途も製品も別のものです。
例えば日本ペイント「ファインシリコンフレッシュⅡ」は、2液形アクリルシリコン樹脂塗料として、耐候性や低汚染性などを備えています。ただし、「シリコン配合」という言葉だけで、その製品の性能や工事品質までは判断できません。
製品名、水性・溶剤系、つや、適用下地、下塗り材を合わせて比較してください。参考:日本ペイント「ファインシリコンフレッシュⅡ」。
フッ素樹脂塗料
フッ素樹脂を用いた塗料で、高い耐候性を重視する仕様の選択肢です。例えば日本ペイント「ファインDFセラミック」は、フッ素樹脂を用いた2液形の製品で、耐候性・低汚染性などを特長としています。
塗膜の耐候性を高めても、下地の劣化、目地や防水の不具合までなくなるわけではありません。長期的な維持管理を考えるときは、塗装以外の部位の修繕時期とのバランスも重要です。「フッ素だから何年も何もしなくてよい」という選び方は避けましょう。
参考:日本ペイント「ファインDFセラミック」。掲載した製品例は系統を理解するためのもので、採用を一律に推奨するものではありません。
無機塗料とは?無機成分と有機成分を組み合わせる考え方
建築の塗り替えに使われる無機系塗料には、耐候性を担う無機成分と、塗膜の柔軟性などを担う有機成分を組み合わせた「無機有機ハイブリッド」の製品があります。「無機塗料」という名称は、塗膜が100%無機成分だけでできているという意味ではありません。
無機成分の耐久性を生かす一方、硬さや曲げへの弱さを有機成分との組合せで補うのが、この設計の考え方です。日本ペイントはこのハイブリッド技術を解説しており、現在は同社の「グランセラシリーズ」や関西ペイントの「アレスダイナミックMUKI」など、大手メーカーからも無機系の製品が発売されています。
無機系の製品にラジカル制御技術を組み合わせたものもあるため、「無機」と「ラジカル制御型」は必ずしも別々の選択肢ではありません。また、無機という名前だけで、すべての製品が同じ性能、あるいは必ず他の系統より長持ちするとは判断できません。
選ぶ際は、具体的な製品の耐候性、つや、適用下地、下塗りとの組合せ、既存塗膜への付着性や次回の改修方法を確認します。高耐候の塗膜でも、建物のひび割れ、目地、防水などの点検や補修が不要になるわけではありません。
参考:日本ペイントホールディングス「無機有機ハイブリッドによる塗膜長寿命化技術」、日本ペイント「グランセラシリーズ」、関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」。関連解説:無機塗料とは。
ラジカル制御型塗料とは?樹脂の名前ではありません
ラジカル制御型とは、塗膜の劣化に関わるラジカルの発生や働きを抑える技術を取り入れた塗料の呼び方です。「ラジカル」という新しい樹脂があるという意味ではありません。
日本ペイントは、紫外線・水・酸素の影響で酸化チタンから生じるラジカルに対し、表面を工夫した高耐候酸化チタンと光安定剤を組み合わせる技術を説明しています。現在の「パーフェクトトップSi」は、シリコン系ハイブリッド塗料として案内されています。
したがって「ラジカルとシリコンはどちらが上か」ではなく、具体的な製品同士を、同じ用途・仕様・試験条件で比較することが大切です。名称だけを理由にフッ素系より長持ちするなどと一括りにはできません。
参考:日本ペイント「パーフェクトシリーズの特長」、「パーフェクトトップSi」。
高意匠塗料とは?色だけでなく模様・質感をつくる材料
高意匠塗料は、単色で覆うだけでなく、多彩な色の粒、石材調の模様、砂壁調の質感など、見た目の表現を重視した塗料・仕上塗材の呼び方です。一つの樹脂や一つの耐久等級を表す名称ではありません。
例えば関西ペイント「水性ゾラコートEX」は、特殊アクリルシリコン樹脂を使った多彩模様塗料です。模様と樹脂の両方に注目すると、意匠性と耐候性が別の比較項目であることが分かります。
高意匠仕上げで確認したいこと
- 写真や画面だけでなく、現物の塗板で色・粒・つや・凹凸を確認する。
- 吹付け・ローラー・こてなど、製品に合う工法と施工条件を確認する。
- 既存の多彩模様や砂壁調の風合いを残すのか、新しい模様に変えるのかを決める。
- 次回の塗り替えや部分補修で、同じ模様・質感をどこまで再現できるか確認する。
既存の意匠性仕上げを塗り替える際は、下地や模様に適合する改修材を選びます。アイカ工業のジョリパットフレッシュのように、意匠性仕上げの改修用として用意された材料もあります。通常のつや有り塗料を塗れば、元の質感をそのまま維持できるとは限りません。
参考:関西ペイント「水性ゾラコートEX」製品説明書(PDF)、アイカ工業「ジョリパットフレッシュ」。
名前や耐用年数だけで選ばないための確認点
- 素材と傷み:外壁材、既存塗膜、ひび割れ、雨水の影響などを先に確認する。
- 塗装仕様:下地処理・下塗り・上塗りの製品名と組合せ、使用量、乾燥・塗り重ね条件を確認する。
- 比較条件:耐候性だけでなく、汚れにくさ、つや、透湿性、必要な柔軟性などを用途に合わせて比べる。
- 工事全体:足場、補修、目地、防水、付帯部を含む工事範囲と次回の改修計画を確認する。
期待耐用年数は、想定した環境や施工条件での目安であり、そのまま実際の建物の寿命や保証期間になるものではありません。促進耐候性試験の時間を、条件の説明なしに実際の年数へ置き換えるのも適切ではありません。塗料は建物を守る材料の一つであり、適切な診断と施工が伴って初めてその性能を生かせます。
本ページは2026年10月にメーカーの公開資料を確認して作成しました。製品例は分類を理解するためのもので、掲載製品すべてを当社で採用しているという意味ではありません。仕様・適用条件は変更されるため、実際の工事では最新のカタログ・施工要領を確認します。
メーカー別の製品紹介
具体的な製品の特徴や用途は、メーカー別の一覧からご確認いただけます。各製品ページには公式資料と、採用前に確認したい条件を掲載しています。
- 関西ペイントの製品紹介:住宅塗替え推奨仕様の主要製品
- 日本ペイントの建築用塗料:製品別の特徴と選び方
- エスケー化研の製品説明:外装上塗り・下塗り・装飾仕上げ(当社では原則不採用。比較検討・見積書確認のための資料です)
- オリエンタル塗料の屋根用塗料:屋根材別の製品案内(当社では化粧スレート瓦・金属瓦以外の屋根の塗り替えで推奨。屋根材・状態に合わせて選定します)