
大規模修繕の話になると、どうしても外壁塗装や防水の話題が中心になります。
しかし、築年数が進んだマンションほど、あとから効いてくるのは給水管・給湯管・ガス管などの設備配管です。
先日、Yahooで、築40年以上のマンション改修に関する質問で、正直「これは危ない」と感じる提案に遭遇しました。
それは、明らかに劣化リスクが高まる年代の配管について、十分な根拠を示さないまま「交換不要」と結論づけた業者がいたことです。
結論から言います。
「交換する・しない」以前に、“判断に必要な知識と手順を踏んでいない”ことが問題です。
「交換不要」と言い切る前に、そもそも必要な“順番”がある
配管の更新要否は、建物条件や配管材質、過去の修繕履歴、漏水履歴、専有部・共用部の区分などで変わります。
つまり本来は、次の順番が必要です。
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① 現状把握(竣工年、材質の推定、系統図、更新履歴、漏水履歴)
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② 劣化兆候の確認(赤水、詰まり、湯温の不安定、圧力低下、腐食の兆候、修繕回数の増加)
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③ 追加調査の要否判断(目視だけで足りるのか、点検口・機械室・竪管などの確認を増やすのか)
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④ 更新方針の立案(全面更新/段階更新/優先順位付け/将来計画との整合)
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⑤ 住民影響と費用の整理(専有部調整、断水・断湯、復旧範囲、仮設の影響)
これを飛ばして「交換不要」と断言するのは、極端に言えば
“診ていないのに大丈夫と言っている”のと同じ構造になりやすいのです。
見積が安い理由は「企業努力」ではなく「見落とし」のことがある
“ヤバイ業者”が厄介なのは、見積が安く見えてしまうことです。
でも、その安さが次のような理由なら要注意です。
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交換・補修が必要な部分を拾えていない
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範囲の前提が甘い(共用部だけ見て、専有部や竪管の話が曖昧)
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数量や復旧範囲が薄い(「別途」や「必要に応じて」が多い)
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将来計画(長期修繕計画)との整合がない
結果として、最初は安いが、後から追加・やり直しが出て高くつくパターンに入りやすくなります。
配管は“後で困る”領域。短期間で問題が出ると被害が大きい
配管のトラブルは「生活」に直撃します。
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漏水 → 天井・壁・床の復旧、下階への被害、保険対応、住民対応
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給湯管トラブル → お湯が出ない、温度が安定しない、クレーム・緊急出動
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ガス設備の不具合 → 生活停止だけでなく安全面でも重大
さらに痛いのは、再工事の段取り費が重くなる点です。
大規模修繕は足場や養生、共用部調整など「初期コスト」が大きい工事です。
本来このタイミングでやると効率が良かった更新を見送ると、後から同等の段取り費が再発します。
つまり、安い見積で一度払ったのに、また払う。
オーナー・管理組合が一番損をする形になりやすいのです。
「交換しない」は悪ではない。ただし“根拠”が文章で出せないなら危険
誤解してほしくないのですが、配管を必ず全て交換すべき、と言いたいわけではありません。
状況によっては段階更新や、優先順位をつけた更新が合理的なケースもあります。
問題はここです。
交換しないなら、交換しない理由(根拠)を文章で出せるか。
最低限、次の説明ができる業者かどうかで、かなり見極められます。
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どの範囲を、どの方法で確認したか
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配管材質や劣化リスクをどう評価したか
- 商品の耐久年数は確認したか
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交換しない場合、どのリスクが残り、どう備えるか
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次回更新の目安(いつ・どの範囲)をどう考えるか
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追加調査が必要なら、何を・いくらで・いつやるか
ここが曖昧なまま「不要です」「大丈夫です」を連発する業者は、私は信用しません。
管理組合・オーナーが損しないための「確認ポイント」7つ
大規模修繕の場で、実務として効くポイントをまとめます。
① 「交換不要」の根拠を“書面”で求める
口頭は逃げ道になります。
書面で根拠が出せるかが分岐点です。
② 見積は総額より「前提」を揃えて比較する
比較すべきは金額だけではありません。
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更新範囲(共用部/専有部、竪管/横引き)
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復旧範囲(開口・復旧の前提)
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仮設・養生・調整費の計上
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「別途」「必要に応じて」の多さ
前提が揃っていない相見積は、比較しているようで比較になっていません。
③ 設備の話になると説明が薄くなる業者は警戒
外壁は語るのに、設備は急に説明が薄い。
このタイプは“見えている部分”しか得意ではない可能性があります。
④ 「追加工事が出やすい構造」になっていないかチェック
見積が安い代わりに、後出しで増やせる形になっていないか。
管理組合側の負担が増えます。
⑤ 将来計画(長期修繕計画)との整合を確認する
今回やらないなら、次に何をどうするか。
“先送り”は、計画とセットでないとただの放置になります。
⑥ 調査費はケチらない(必要な部分には)
調査は費用がかかりますが、意思決定を誤ると桁が違う損になります。
調査をしたうえで判断する状態にするのが合理的です。
⑦ 可能なら第三者の目(監理・顧問)を入れる
工事会社は施工のプロである一方、売り手でもあります。
判断が重い局面ほど、第三者の目は効きます。
これは危険信号。「ヤバイ業者」チェックリスト
1つでも当てはまったら、黄色信号です。
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「大丈夫」「不要」を連発し、根拠が薄い
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調査を嫌がる/調査項目がほぼ無い
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更新範囲が曖昧(どこまでやるか言い切らない)
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見積に「別途」「必要に応じて」が多い
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設備の説明が弱い、回答に根拠がない、質問すると話がぼやける
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保証やアフターの説明が曖昧
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リスク説明が無く、価格の話だけ強い
まとめ:大規模修繕は「安くやる」より「ムダを出さない」ことが重要
築45年クラスのマンションでは、配管を含む設備は“見えないところ”ほど差が出ます。
安い見積が出たときほど、
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何をやるのか
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何をやらないのか
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その判断の根拠は何か
を冷静に確認してください。
説明が腑に落ちない時点で立ち止まることが、結局いちばんの節約になります。
当社の考え方(ご相談を受けるときに大切にしていること)
当社は、工事を“売る”会社ではなく、建物を直す会社です。
だからこそ、最初に「何を直すべきか」「どこにリスクが残るか」を整理し、納得できる根拠をもとに判断材料を揃えることを重視しています。
大規模修繕の進め方、相見積の見方、設備更新の考え方など、
管理組合・オーナー側の立場で一度整理したい場合は、お問い合わせください。
※本記事は特定の企業・個人を指摘する目的ではなく、マンション大規模修繕における見積・判断の注意点を一般論として整理したものです。個別案件は条件により結論が異なるため、判断は調査結果と専門家の助言に基づき行ってください。










