午後、窓から通りを見下ろすと仮装をした子供の集団が移動していく姿が見えた。
大学のすぐ近くに住んでいたが、アメリカと言っても都会でアパート・・・日本で言うマンションばかりの地域であるため、子供たちは闇雲に「トリック・オア・トリート」と言って家を回ることはなく、知り合いの家だけを大人が同伴して回っていたのだ。
その夜には、知り合いの家でパーティがあり、ハードな勉強漬けの毎日の中の楽しい時間を過ごした。
夜中にパーティーから帰ってきて、ふと時計を見ると日本の夕食時だったので、日本ではまだ馴染みがなかった本場のハロウィーンはどんなものなのかを両親に伝えたくて、実家に国際電話をかけた。
今と違って、ネットもまだ無く、通信手段は国際電話しかなかったからだ。
電話に出た母は、慌てた様子で
「お父さんの様子がおかしいから今から病院に行くから!」といってすぐに電話が切れた。
次の日の朝早く、今度は母から電話があり、
「脳梗塞だって。入院になったけど、たぶん大丈夫だから心配しないで。」
そう言って短い電話を終えた。