耐久が高いとして売られている「無機塗料」ですが、実際はどのような物であるか解説します。
無機とは何か?
先ずは、無機の対義語である有機から説明します。
有機とは、簡単に言うと生命体を形成するもののことです。大まかな考えですが、炭素を含むものです。塗料は化石燃料である石油を原材料としていますから、有機物です。
これに対して、有機ではないものが無機といわれます。炭素以外で形成されている生命体ではないものが無機であるとも言えます。
代表的なものには、石やダイヤモンドなどの宝石があります。
100%無機の塗料は存在しない!
「石やダイヤモンドと同じ無機の塗料なら長持ちするのでは!?」と思われる方もいるでしょうか、当然ながら無機だけでは塗料になりません。液体にして、塗り、対象物に密着させるには有機物が不可欠だからです。なので、無機塗料と称されている物は、100%無機ではなく、有機が混ぜ合わせているハイブリッド型で、メーカーによっては明記しています。
しかし、悪質な業者は、完全無機などと称して、100%無機で作られている塗料かの様にアピールして売っていますので、ご注意ください。
無機塗料の問題点
無機は、石に様な硬いものなので、粉にしても密着が悪いです。密着性を補うために有機の塗料を混ぜ合わせているものですが、それでも一般的な塗料と比べると密着力が弱いです。密着力が弱ければ、数年で塗膜が剥がれてくるなどの事故につながりますので、密着力の弱さを補うために高価な専用下塗り材などを用いる仕様となっている商品が多いです。高額な下塗り材を使わず、代わりに安価な下塗り材を用いる業者もいるので、塗装が剥がれてくる事故が起きることもあるようです。屋根は、壁に比べ、遥かに過酷な状況にある部位ですので、密着力の低さがアダとなる可能性が高く、最近は屋根用の無機塗料も販売され始めましたが、しばらくは使用を控え、注視が必要だと考えます。
屋根塗装には向かない・・・?
無機塗料は、原則として屋根には向きません。密着力が弱いからです。
しかし、最近は、無機塗料を屋根に使いたいという要望が多くなってきたようで、塗料メーカーも屋根向けの無機塗料の販売を始めましたが、使い方は限定的であったり、厳密に仕様を守る必要もあったりする者が多いです。製品について問い合わせると、塗料メーカーからはなんとなく、自身がないような回答が返ってきますので、まだ使用するには早い(実績がない)のかと感じています。
無機塗料は商品によって性能差がある!
無機塗料は、商品によって性能差があります。製造メーカーではない会社が売っている塗料(カタログが異常に豪華であったり、イメージを中心とした立派なホームページがあるような商品)にある無機塗料の多くは、無機を合わせたフッ素樹脂塗料です。こららが、ファブレスメーカー(製造していないメーカー)が多く採用するのは、OEMとして供給してくれるメーカーがあり、かつ仕入価格を比較的低く抑えられる商品であるからだと思われます。これらの商品は、無機を名乗っていますが、性能としてはフッ素樹脂塗料とそれほど変わらないと考えられています。
無機塗料には、純シリコン(一般的な塗料のシリコンとは違うものです)を用いた物も存在します。これらはフッ素樹脂を主とした無機塗料と比べて価格が高いですが、フッ素よりも5~10年ほど長くもつ性能があるという試験結果があります。また、実績もある物なので、性能に問題がないことは確認されています。
無機塗料が本当に必要ですか?
せっかくの塗装ですから、耐久性が高いに越したことはありません。でも、いくら塗料の耐久性が高くても所詮数ミクロンの厚みしかない物ですので、塗装がもっていても、対象の壁や屋根が、それ以前に問題が起きれば意味がありません。素材の状態や、建物の造りなどから本当にその塗料が適しているのかをよく考えてみてください。木造住宅の多くは、無機塗料の期待耐久年数以前に、塗装以外の問題が起きることが多いです。