第7話 帰国12月に帰国した。 父は既に退院していて、元気そうだった。 多少のマヒは出たが、動けてもいたし、認知に問題が出ることもなかった。 僕自身は、年末の忙しい時期に仕事をはじめても邪魔になるだけだろうという事で、年が明けた1月から仕事をすることになった。 クリスマスにはアメリカの友人たちからグリーティングカードが届き、アメリ...
第6話 帰国準備大学のアドバイザーから、一旦休学して落ち着いたら戻ってきてはどうかと提案があった。 リハビリが必要と言っても父の状態は悪くなかったので、1年もしないうちに戻れると思い、休学をすることにした。 ただ、アパートも家具も車もそのままにして離れるわけにはいかないので、すべて手放してから帰国することになった。 意外にも、それに時...
第5話 引き止め日本からアメリカに帰って、スグに大学の相談員に事情を話した。 相談員は、アメリカで勉強を続けないかと言ってくれ、奨学金など斡旋してくれると言ってくれた。 ただ、僕は父が回復したらまたアメリカに戻ろうと考え、休学をすることにした。 熱心に引き止められると思っていなかったので、少しうれしかった。 アパートのマネージャー(管...
第4話 帰ってきて欲しい父の様子は想像していたよりも良かった。 ただ少しマヒが出てしまったので、リハビリが必要であるとのことだった。 父を見舞った夜に、母から帰国を打診された。 母には言わなかったが、卒業後はすでに政府機関からお誘いを受けていて、その方向に進もうと考えていた。 生粋のアメリカ人でも、なかなか就職(就任?)することが出来ない機関...
第3話 一時帰国以前は、上野から新幹線に乗るしかなかったのだが、その時初めて東京駅まで新幹線が延びていることを知った。 慣れない東京駅は、巨大すぎてどちらに行けば新幹線ホームがあるのか全く分からず、右往左往してしまった。 日本語を長い間まともの話していないと、日本に帰ってきてもとっさに日本語が出て来ないもので、考えれば考えるほど英語し...
第2話 父の入院 父が倒れてから数日たって、母から電話があった。 「一回帰国して欲しい」 不安な様子がよく分かった。 でも、学期中のため一時帰国は本当に難しいので、ベテランズデイと週末で本当に短期間で一時帰国することにした。 いずれでも父のことが気がかりで勉強も手に付きづらかったため、自分自身が安心したいという気持ちがあったのだと思う...
第1話 ハロウィーン午後、窓から通りを見下ろすと仮装をした子供の集団が移動していく姿が見えた。 大学のすぐ近くに住んでいたが、アメリカと言っても都会でアパート・・・日本で言うマンションばかりの地域であるため、子供たちは闇雲に「トリック・オア・トリート」と言って家を回ることはなく、知り合いの家だけを大人が同伴して回っていたのだ。 その夜には...